タダ



これは、今からちょうど1年前に描いたもので…
ありがたい事に、
各所で記事にしていただいたり、TVでも取り上げていただけたほどの反響がありました。


今回の漫画は…
「友達だからタダでやって」という無茶な頼み事をされた時に、「ぼくならこうする」という自分なりの対処法を伝えようと描いたものです。
そうして分かりやすく伝える為にも、無駄を省いて端的に描いたので、内容や言い回しは実際と違う部分はありますが…
こうした「友達だからタダでやって」の頼まれ事は、学生の頃からありました。

その頃は“プロ”ではないので、自分の作品でお金を貰う経験がなかった事から、対価を要求する事に罪悪感を感じてしまって、「タダ」で受けていました。
今は関係を切れば、それで二度と会う必要はないですが…
学生の頃は、学校という狭い環境なので…
断るとずっと気まずいですし、後々に面倒な事にもなるかもという考えもあったからかもしれません。

そうして、もしかしたら…
「タダ」でと頼む側は、大人になった今でも、そうした“学生の頃のノリ”で軽く頼むのかもしれませんね。
あの時は「タダ」でやってくれたんだから、今でも大丈夫だろうと…。
コチラは、お金を貰って仕事をする“プロ”になったので…結果的に、相手との温度差やギャップが生まれるのかと思います。


そうした自分の経験から…
「クリエイターが安く使われる事」に不満を持っていたのですが…
最近のTwitterでも、ちょくちょく似たような不満や悩みを持つ方が多くいると知り、なんとか出来ないかなと考えていました。
このお話を描いた時は、「絵描きさんなら共感してもらえるかも。」と思っていましたが…
正直…ここまでの話題になるとは、想像していませんでした。
そこには…
ぼくのような絵描きだけでなく、音楽家や美容師、整備士や料理人など…多くの“プロ”の方に共感していただけたからだと思いました。
みなさん、職業は違いますが…
いただいたコメントから、「タダで頼まれる事」は“あるある”のようで…そうして「友達だからタダでやって」と言われて、その対応に困った経験があるとおっしゃっていました。
その中には…相手との関係性もあり、不本意ながら断り切れなかった方もいると思います。

でも…
ぼくは、「安く済ませる」という考えで近づいてくる人を、そもそも“友達”とは思っていませんので、関係性を切って良いと考えています。
相手を想っての行動ではなく完全に自分の為の言動ですし、対等な関係ではなく利用されていますからね。
それに…
一度、安請け合いしたら、次も同じような頼み事をされると思うので、勇気を持って断る必要があると思います。
なんといっても、お金をいただいて仕事をする“プロ”なんですから。

逆に…
ぼくは、以前…結婚式のウェルカムボードをお祝いとして制作した事があります。
それは、お祝いの品なので、お金をいただくつもりは欠片もなかったのですが…
それでも、「素敵なモノを作ってくれたから、“気持ち”として受け取って欲しい!」と頼まれ、いただいた事はあります。
そのように…
「無償でやる」というセリフは、コチラ側が言うべき事だと思っていますし、本当の“友達”なら、そうした誠実な対応をしてくれるハズです。






そうした想いもあって…
上記のように、過去にも似たようなテーマで描いたお話があります。

原価がある事が見て分かる“商品”と違って、それが見える形でない“知識”や“技術”は安く見られがちです。
その“知識”や“技術”を習得するのに大変な労力と苦労…そして、膨大な時間がかかっている事を、もっと知って欲しいです。
そこにこそ、“作者の価値”も含まれていますので…それを「タダで」なんて言われると、やはり辛いものがあります。


こうした事は、言葉で説明しても中々伝わらず、実際に経験してもらわないと分かっていただけないと思うのですが…
それでも…
作り手の気持ちを少しでも分かっていただきたいのと…
こうした辛い思いや悩みを抱える方に、ぼくの漫画で少しでもいい影響を与えられたらと願います!